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2013/01/01(火)00:02
Mystique: Dead Drop Gorgeous
Mystique: Dead Drop Gorgeous (X-Men)Brian K. Vaughan Daniel Perez Sanchez Jorge Lucas

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■Mystique vol. 1: Dead Drop Gorgeous
■作:Brian K. Vaughan/画:Jorge Lucas
■144ページ/カラー/ソフトカバー/14ドル99セント/ISBN:9780785112402

 X-MENの仇敵の1人で、シェイプシフター(変身能力者)の女テロリスト、ミスティーク。その彼女を主役に、2003~2005年にかけて刊行されていたオンゴーイング・シリーズ『ミスティーク』(全24号)の、最初のストリーアーク「ドロップ・デッド・ゴージャス」の単行本。収録作品は『ミスティーク』#1-6。

 ライターは、当時、『Y:ザ・ラストマン』(2002~2008)で注目を集めていたブライアン・K.ヴォーン。

 ちなみに『ミスティーク』誌は、全24話がTPB化されていた(全4巻)のだが、現在では、第1~13号を収録した『Mystique by Brian K. Vaughan Ultimate Collection』と、第14~24号を収録した『Mystique by Sean McKeever Ultimate Collection』の、全2冊の「アルティメット・コレクション」にまとめられているので、まとめて読みたい人はこちらを買うのがお得だろう。

Mystique by Brian K. Vaughan Ultimate Collection
Mystique: Ultimate CollectionBrian K. Vaughan Jorge Lucas

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Mystique by Sean McKeever Ultimate Collection
Mystique by Sean McKeever Ultimate CollectionSean McKeever Manuel Garcia

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 X-MENの指導者プロフェッサーXは、ミュータントに関わる諸問題を、隠密裏に解決するためのミュータント・エージェント(要するにスパイ)を密かに育成し、世界各国で任務に当たらせていた。そんな中、ロシアから流出したソ連製センチネル(ミュータント・ハンター・ロボット)の行方を追っていたエージェント16が、武器商人スタインベックによって殺害される事件が発生する。プロフェッサーXは、エージェント16の任務を引き継ぐ人材として、テロリスト・ミスティークに白羽の矢を当てる。しかしそのころ彼女は、合衆国国土安全保障省の特殊部隊によって逮捕されていた……。

 ……その後、色々あってプロフェッサーXの元へ連れて来られたミスティークは、プロフェッサーから状況の説明と、ソ連製センチネルがキューバに売られたことを伝えられ、彼女の身の安全と引き換えに、センチネルの破壊任務を請け負うのだった。


 率直な感想をいうと……あまり面白くない。

 まず、ストーリー展開が面白くない。具体的にいうと、「何にでも変身できる女スパイ」が主人公のコミックスで、主人公がセンチネル運用計画を担当している将軍に化けて、センチネル基地に侵入を試みて、変装が完璧だったので、問題もなく侵入できた……そんな“当たり前のこと”が展開されていく話を読まされても、面白いとは思えない。

 何らかの事情で変装が出来なくなったとか、何らかの事情で変装がばれるとか、化けた人間が意外な事情を抱えていたことで任務の達成を困難にしてしまう……といった予定外の事態、「どんな外観にも変身できる」という主人公の能力に対立する事態が起こってこそ、ドラマが盛り上がるというものではないだろうか。

(いや実は、「変装している主人公を探知できる機械」や「負傷により集中できず、変身が不完全」といった、不慮の事態は起きているのだが、どちらもミスティークがプロフェッサーXと接触する以前の前座的なエピソードでの出来事であり、そこで手札を無駄に使ってしまったために、物語の本筋の方でそうした事態を起こせなくなっているのだが)

 そして、物語の進行上で、「ご都合主義的なイベント」が次々に発生するのも、つまらなさに輪をかけている。何にでも変身できる女スパイが、予定外の事態に遭遇しないどころか、運にも助けられて、実に手軽に任務をこなしていく。そんな物語が、面白いだろうか?

※ご都合主義の例:
「センチネルの運用計画に関わっている将軍が、ノーガードで街中に来るらしいとの情報を都合よく入手したので、街に行って将軍を拉致したところ、とてもアッサリと秘密基地の場所を教えてくれたので、将軍に化けて侵入しました」

「事前に、“破壊工作は現地人の仕業に偽装するように”とプロフェッサーXにオーダーされていたのですが、ミスティークが秘密基地に侵入した直後、武装した現地人のグループが基地に突入してきたので、偽装工作とかする必要がなくなりました」


 それと、物語のクライマックスでミスティークは「1人の無垢な存在を殺すことで、数百人の市民を救える」といった、苦渋の判断を迫られるのだが、この「無垢な存在」が、キャラクターとしてロクに掘り下げられていないため、「死んでドラマを盛り上げるために用意された小道具」でしかなく、読んでいて非常に、非常に冷める。


 こういう穴のあるシナリオも、アーティストが必要以上の技量を持っている場合は、「絵の迫力で、穴のあるシナリオを補い、押し切る」ということもママあるのだが、本作のアーティストは、そもそもスパイものなのに満足にガンアクションが描けていない上(大概のガンアクションは、「至近距離で突っ立っている敵兵士に、ミスティークが的確に弾丸を当てている」絵を描いただけ)、その上、背景もおざなりにしか描いておらず、いうなれば、「シナリオに書かれている最低限の説明を、とりあえず絵に起こしただけ」のアートであって、シナリオをなんら補強してはいない。

 本話で数少ない「面白いところ」は、冒頭とラストで、本シリーズを今後彩るであろう悪役、黒幕、その手下たちが紹介されていくシーンだった。短いページ数で、生き生きと、あるいは思わせぶりに描かれていくキャラクターは、個人的には非常に魅力的に写った。彼等の活躍が本巻でろくろく描かれていないのは非常に残念であるが、かといって、第2巻以降を購入する気力は沸いてこなかった。

 ……こう、『アルティメット・コレクション』の方で2巻分をいっぺんに読んでいたら(それらの悪役の活躍も、もう少々書かれていたであろうから)、読後の感想も違っていたかもしれない。残念。


 そろそろ悪口を並べ立てるのも嫌になってきたので(古人いわく、「詰まらない作品を詰まらないという程、詰まらないこともない」)、この辺にするが(10年以上も前の作品に今更文句を並べてもしょうがない)、まあ、ミスティークやヴォーンが好きな人ならば、読んでみるのも一興かも知れない……といった、ひどく適当なシメで終わる。


 ちなみに、本巻は、ごく一部で有名な、「エヴァンゲリオンそっくりのセンチネル」が登場する話であるが、まあ、ロクロク活躍しないので(単なるミサイルに置き換えても構成上なんら問題ない程度の、物語の状況を作るための小道具に過ぎない)、そちら目当てでこの単行本を買うのはお勧めできない。
  
  
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